大阪タオル工業組合


それぞれの企業が得意とする技術を磨き、自社の顔をつくる。

  • 2011年12月15日(木) 14:00 JST
  • 投稿者:
    matsumoto

泉州タオル


中国製品を中心とした輸入タオルが市場を席巻する今、国産タオルは残されたわずか2割の市場を大阪の泉州タオルと愛媛県の今治タオルで分け合う状態が続いています。この厳しい状況をなんとかしようと、泉州タオルのメーカー104社でつくる大阪タオル工業組合では製品の品質向上はもとより、ジャパンブランド事業などの様々な戦略に取り組みながら「泉州こだわりタオル」ブランドの普及に務めています。


(コーディネーター)
毎年、大阪と東京で展示会を開催されていますね。

(株式会社尾原デザインスタジオ 尾原久永)
取材風景はい、1993年から毎年開催しています。当初は大阪だけの展示会でしたが、現在、大阪では11月に心斎橋のクリスタ長堀の滝の広場で、東京は2月に丸ビルで開催しています。

地場ではこれまで奇をてらったデザインやギフト対応の高級商品を追いかける傾向が強くありました。しかしその市場だけでは、糸に糊をつけるサイシングや糊を落とす染工場、刺繍を入れる、ミシンを掛けるなどの役割を担う企業が連携してものづくりを行う、大阪タオルならではの分業体制を維持し、産地全体を盛り上げる売り上げにはつながりません。デザインのいいものを少しつくったところで、産地は潤わず潰れてしまいます。

(コーディネーター)
JAPANブランド事業として採択されたことは、産地を盛り上げていくひとつの起爆剤になったかと思いますが、そのあたりはいかがですか。

(尾原)
泉州こだわりタオル2003年には産地を盛り上げつつ、各企業のポテンシャルを上げ、各メーカーが自社のこだわりを見つけながらモノづくりに活かして販売をするという“泉州こだわりタオル”の ブランド化プロジェクトを開始し、展示会を行いました。翌年の2004年には「泉州こだわりタオル」を商標登録。2006年にはJAPANブランド育成支援事業に大阪府内で唯一採択され、さらなる究極の泉州こだわりタオルをめざし、アメリカ・カリフォルニア州のサンホーキンから独自に綿を2種類取り寄せ、風合いの違うタオルをつくりあげました。2007年に地域団体商標として「泉州タオル」が登録され、東京インターナショナルギフトショーに出展。これを契機に2008年から東京・丸ビル1階のマルキューブ、大阪ではクリスタ長堀・滝の広場で「泉州こだわりタオル」の展示会を開催しています。

(コーディネーター)
展示会の開催、JAPANブランドの採択を通して、泉州こだわりタオルは市場に浸透しましたか。

(大阪タオル工業組合 竹本利弘)
泉州こだわりタオル展示会の継続とJAPANブランドに採択されたことで、各社のものづくりやデザイン力はある程度のステージまで達してきました。しかし、和泉山脈の湧き水が出る井戸の井型を表した“泉州こだわりタオル”のロゴマークは一般市場には出ていないのが現状です。
展示会は私どもの取引先である卸商の方々だけでなく、一般消費者の方にも見ていただいています。毎回、一般消費者の方々からはとても良い印象を持っていただき、「どこで買えるの」との好感度の高い質問を頂戴するのですが、なにぶん卸商を通しての商いを主としていますので、私どもでは明快に回答できずに歯がゆい思いをしております。
そういう意味でも私どもメーカーと卸商の方々とが強い関係性を再度構築する事で、一般の消費者の方々に泉州こだわりタオルの存在を知っていただきたいと考えています。そのため、今回のデザインプロデュース型商品開発促進事業では私どもメーカーとタオル卸商との新連携での販路開拓をめざしています。

(コーディネーター)
では、この3年間のプロジェクトの中で具体的に卸商の方々とどのような関係性を構築されようとしているのですか。

(尾原)
今年、ディック・ブルーナのミッフィーのライセンスを持つ西川リビング様からこのキャラクターグッズのタオル製品を泉州こだわりタオルで展開したいと、ある組合企業に相談がありました。商品は、ミッフィー×泉州こだわりタオルというPOPまで制作して展開されました。こういう事例が僕達の理想であり、泉州こだわりタオルのブランディング構築にはありがたい。しかしこのような事例は頻繁にあるものではないので、やはりまずは組合主催の展示会をコンスタントに開催することで各企業の商品力を上げ、卸商の方々に認知してもらうという地道な活動が必要かと思います。

(大阪タオル工業組合 竹本)
大阪と東京の展示会を通して各企業の技術は進化しています。独自のブランドを確立した企業もあります。これまでメーカー側は卸商に対してこれを買ってくださいとお願いするのが常でした、しかしこの3、4年ほど前から卸商の方から泉州こだわりタオルのロゴマークを使わせて欲しいという依頼が来るようになりました。

(コーディネーター)
みなさんの努力が実りつつあるということでしょうか。

(尾原)
そうですね、そう信じたいですね。
JAPANブランドで展開していたデザインはモダンでラグジェアリーな感じのものでした。しかし少し凝ったものになると一部の企業は出来るが、残り100社は出来ないということになります。やはりどの会社も取り組めるデザインであることが産地のポテンシャルを持続させる条件でもあります。デザインとしてハードルは高くなりますが、赤ちゃんからお年寄りまで年代を問わず使っていただけ、優しく、好き嫌いのない、誰にでも愛されるデザインを今後は展開していきたいと考えています。

(コーディネーター)
では11月の展示会では、そのデザインを拝見することができますか。

(尾原)
はい、見ていただけると思いますので楽しみにしてください。

(コーディネーター)
では、次回は展示会の様子を取材させていただきたいと思います。
ありがとうございました。

(2011.9.6取材)

大阪タオル工業組合の「ツボ」

山納さん・組合としてのブランドを訴求しつつ、個々の企業が切磋琢磨するシクミがあります。AKBの“総選挙”みたいですね。

・商品の売り先は卸、つまりB to Bです。その組合が、一般消費者向けの展示会を行い、そこから情報を集めています。

・同じくタオルの産地である今治では、佐藤可士和氏を起用してブランディングを展開しています。手法の違いに注目。


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