made_in_west


すでにある仕組みを活かし、新しい商品をつくる

  • 2013年11月19日(火) 13:25 JST
  • 投稿者:
    matsumoto




made in westは、関西のものづくり企業の技術力をクリエイター視点で再編集し、ものづくりの新しいスタンダードを確立しようとするプロジェクトです。今回は、パートナー企業で、オーガニックコットンを得意とする奈良の靴下メーカー・ヤマヤ株式会社を訪問し、同社の野村社長とオプスデザインの神崎さんに、コラボレーションのきっかけや進め方について、お話をうかがいました。

綿栽培から興った靴下産業

ヤマヤ株式会社 代表取締役社長 



野村佳照さん


 弊社がある奈良県北葛城郡広陵町は大和盆地にあり、雨が少なく常に水不足に悩まされた地でした。そのため稲作を補う形で綿が栽培され、また麻に代わって綿の需要が高まったことで、木綿織の産業につながりました。幕末の開港により、インドや中国から綿や綿織物が輸入されるようになると、綿の栽培は衰退し、やがて木綿織りも衰退していきました。
この地で靴下が作られるようになったのは、明治の終わり頃です。馬見村(現・広陵町)の地主の分家二代目の吉井泰治郎氏が、大和木綿に替わる事業として、手回しの編み機を導入して靴下の生産をはじめ、それが近隣に広がっていきました。



 販売については大阪の問屋が主体となり、我々は問屋から糸の供給を受けて靴下を製造していました。戦後にはウーリーナイロンが開発されたことで、靴下産業は飛躍的に発展しました。奈良県の靴下生産量は全国一となり、今でも国内の4割は奈良県で生産されています。
 バブル崩壊後に中国からの輸入品が増えたことで、靴下の国内生産は急速に縮小しました。以前は輸入品が2割でしたが、今は国内生産が2割になり、企業数は最盛期の4分の1となっています。


販売を問屋に任せているだけでは生産が維持できないとの危機感から、自社製品の開発を考えるようになりました。そして平成6年に、ヤマヤの中で「ホフマン」というブランドを立ち上げました。当初は商品を販売してくれる卸・ショップの開拓が思うように進まなかったり、売上金の回収サイトが半年先になり、資金繰りに苦労したりしました。

同じ頃、海外からの輸入急増に危機感を持つ県内の繊維企業の有志で販路開拓を目的として異業種グループを結成しました。このグループから協同組合エヌエス(Natural Style)が興り、オーガニックコットンを素材として商品を展開する「オーガニックガーデン」が立ち上がりました。

made in westとの出会い


株式会社オプスデザイン

神崎恵美子さん

 2年ほど前、made in westとして、奈良でオーガニックコットンの靴下を作りたいと思っていたときに、ネットで「オーガニックガーデン」を見つけてご連絡させていただき、野村社長と出会いました。産地で蓄積してきた技術を活かしながら商品を生み出していかれる姿勢に共感を覚えました。


野村さん
 made in westの根本にある、国内のものづくりを大切にし、産地企業を前面に出して商品開発を行うという考えをお聞きしたので、私たちとしても嬉しいお話でした。自社商品を認知してもらう難しさに直面し、商品をどう見せていくかを模索していた時期だったので、「変化のきっかけになれば」とご協力させていただくことにしました。



神崎さん


オーガニックコットンを使った靴下を作りたいと考えていました。私たちはヤマヤさんの既存の仕組みの中で私たちナイズしていく方が無理なく進められると思い、既存のデザインを活用して丈・サイズ感・色を調整するという方向で進めました。

ただし使ったのは、天然染料ではなく化学染料です。オーガニックコットンといえば無農薬、天然染料が定番ですが、本来の良さは綿が育ちきったことによる吸収力・保温力の良さ。その品質は、化学染料を使うと落ちるというものではありません。そこで品質の良さをアピールしつつ、色バリエーションを増やすことで、普段の洋服でも違和感なく履けるファッション性を前面に出そうと考えたのです。



次に作ったのは、オーガニックコットンのリブ・ソックスです。最初の商品が女性っぽいデザインのものだったので、今回は男性も使えるものをと意識しました。今年2月に新商品として出しましたが、リピーターが多く、手応えを感じています。


 


今開発しているのが、ウールのような手触りの靴下です。これは私たちがデザインして指示する、といった作り方ではありません。「ウールのような手触り」というコンセプトをお伝えして、それなら綿糸の撚りを甘くして、ごく弱く編む技術がある、というように提案いただく形で一緒に進めています。

 
ヤマヤさんとのコラボレーションでは、新たな仕組みを作るのではなく、すでにある仕組みの中で取り組んでいただいています。オプスメンバーにとっては新たな発見があり、ヤマヤさんにとっては、知っていることなので無理がない。そういうものづくりの中で新しい商品を作っています。







伝えていくブランドとして

 「ホフマン」ブランドでは、シーズン毎にデザインを変える戦略です。今回から私たちは、ホフマンというブランドを伝えることを目的に、made in westとホフマンとのダブルネームでの商品づくりに取り組みはじめました。お互いの強みをシェアすることで、新しい作り方を模索中です。


 made in westのコンセプトの根底にあるのは、関西にある地場産業やものづくりの技術、品質についてもっと知ってほしいという思いです。展示会や百貨店でのフェアなどに積極的に出展してきて、バイヤーの方々との出会いに恵まれたことで、商品の出口が増え、売上も徐々に上がってきています。今後は売れていく商品の層を厚くして、協力いただいた企業さんに十分な利益をお返してきるよう、ブランド力をさらに強化していきたいと考えています。


2013.9.20

取材・文 山納 洋
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