P.A.S


自分のスピード以上で、物事が流れていく感覚

  • 2014年2月10日(月) 12:00 JST
  • 投稿者:
    matsumoto

 


2013年の東京ギフトショー以降、東急ハンズを中心に販売店舗の拡販に比例して売上を伸ばし続ける「P!nto」。株式会社ピーエーエスの代表取締役 村口健一さんの営業戦略と、野村寿子さんの 作業療法士としての知識と技術、プロデューザーの野口顕さんのわかりやすく伝えるクリエイティブ力。 三位一体での事業は子ども用の開発、発売へと一歩いっぽ着実に進んでいる。

売れ行きは順調、メディアからの引き合いも多く

株式会社 ピーエーエス 代表取締役
村口健一さん
その後、東急ハンズでは取り扱い店舗数が増えてきました。年末から年明けにかけて、全29店での取り扱いになります。ロフトは当初数店舗から始まり、今60~70店舗に置いてもらっています。その他、ヨドバシカメラ、R.O.U.(イオン系の雑貨専門店)での取り扱いも決まっています。またWEBショップしては、直販売のほか、楽天、アマゾンでも販売いただいています。







売れ行きは順調で、月売上数は現在2000個に達しています。パネル、パンフレット、DVDなどの修正を図り、お客さんに見ただけで理解できるようにしたこともあり、今では弊社のスタッフが店頭に立たなくても売れるようになってきました。最近では、商品をすでに知って買いに来てくださる方や、リピーターの方が増えてきました。









メディアでの紹介としては、これまでに日経新聞、日経トレンディ、日テレ『PON!』などで取り上げていただきました。また今年10月に出版された『ネーミングをいかしたヒットデザイン』という書籍では、名だたる大手メーカーの有名商品と並んで「p!nto」を紹介いただきました。
マスコミ向けには発売当初からプレスリリースを打ってはいましたが、実際にいただいた取材依頼の多くは「ハンズ、ロフトで見た、紹介してもらった」というものでした。特にバイヤーさんに商品を気に入っていただき、積極的にアピールしていただけたことが大きかったと思います。


売れたことによる想定外



売上が上がるようになって、お引き合いを数多く頂くようになりましたが、売り先を絞って展開しているため、多くのお話をお断りしている状態です。また生産が追いつかない状態が続いています。中身のウレタン部分は在庫を抱えていますが、縫製が間に合わず、仕上がった商品を日々送っていただいています。工場を徐々に増やそうとしていますが、立体構造の縫製が難しく、仕上がりに時間がかかっています。




仕事量が増えたことも大変でした。障害を持った方への通常業務を行いつつ、発送作業や店舗での販売に従事していましたが、土日にずっと店に実演で立っていたので、なかなか休みが取れませんでした。また作業場が手狭になりました。事務所が箱で一杯になり、梱包と発送を済ませてそれがなくなり、納品が来るとまた一杯になり、というサイクルを繰り返し、「もう無理」となったときに、近所の倉庫会社の方に声をかけていただき助かりました。
最近になって販売のペースが落ち着き、また新規のアルバイトを採用できたことで、次にどう展開していくかを考えられるようになりました。


商品の良さを伝えるための工夫



株式会社ジールプラス 野口 顕さん


 発売当初の「お店に立たなくても商品が売れるようにする」という課題を解決するため、「p!nto」を販売いただいている大型雑貨店の売り場に足を運び、各店舗の販売員の方がどんな対応をされているかを見ました。結果お店によって対応が違うことに気づきました。そこでどのお店でも商品の特徴をブレずに伝えられるよう、パネルやパンフレットなどを改修しました。またWEBサイトも、食事中、授乳中、勉強中、デスクワーク中など、「p!nto」を使っていただくシチュエーションを具体的に見せるように修正を加えました。

「p!nto」がなぜ良い商品なのかを伝えていくことも必要だと考えています。WEBサイトでは、東京大学大学院教授の佐々木正人さん、北海道士別市立病院診療部長の澤口裕二さんと野村さんの対談を発信しています。今後は「p!nto」を使っている人の声も、もっと紹介していきたいと考えています。





これからの展開
 

株式会社 ピーエーエス 野村寿子さん


「p!nto」の良さを伝えるために、現在本を書いています。商品の特徴とともに、身体と環境、リハビリテーション、体操・ストレッチの方法などについてまとめつつあります。
12月には、子ども向け商品として「p!nto kids」の販売をスタートします。カラー展開は5色。PRのために「ニャント」というキャラクターを開発しました。従来のロフト・ハンズに加えて、百貨店や郊外型SCなど、学習机やランドセルに強い販路を開拓してきたいと考えています。


商品のモニタリングも行っています。「p!nto」を使うことで、自律神経や睡眠効率がどう変わるかを様々なシチュエーションで実験したところ、新幹線の中で使うと副交感神経の値が高くなり、リラックスできることが分かりました。そこから、乗り物の中での「p!nto」使用のプロモーションに活かせればと考えています。
「p!nto kids」については、幼稚園で使っていただき、効果を検証して発信していきたいと考えています。



村口さん

ギフトショー出展時に、台湾・香港・上海・韓国のバイヤーの方々からも「扱いたい」とのお声をいただきました。そのため国際特許の登録が必要だと思い、申請を行いました。
できれば来春には体制を整え、販売を拡大していきたいと考えています。またキッズ以降にも、新たな商品は開発していく必要があると思っています。








事業を振り返って


野村さん


事業をスタートさせてからは、充実した時間を過ごしてきたと思います。対面販売では売れない時間が長く大変でしたが、それをやってきたことが力になっています。私たちの通常業務は、障害を持った方一人ひとりをケアする仕事なので、エンドユーザーを大事にするという姿勢を常に持っていますが、この姿勢を忘れることなく、数を売っていく仕事、グローバルに展開していく部分を学んでいきたいと思っています。


村口さん

福祉の仕事では、自分で考えて、自分で作るというのが基本だったのですが、デザイナーの力を借りると、『ネーミングをいかしたヒットデザイン』に載る位のクオリティものが出来上がるのを目の当たりにして、とても勉強になりました。


野村さん

助成金がなければ、ここまでやっていなかったと思います。1年前にスポルテックに出そうか、どうしようかと言っていましたが、やめていたら、今こうなってはいませんでした。
今は自分のスピード以上で物事が流れているので、必死にこなしながら、自分のスピードを上げていっている感じです。今までだと任せられなかったことが、そうしないと仕方がないので、任せられるようになりました。それがみんなが自立するきっかけになったと思います。

2013.11.15




ピーエーエスの「ツボ」


・基本的に、売り先を絞った展開しています。
・売上が本格的に上がるようになったときに、人手と生産キャパと作業場所の不足が起こっています。
・また製造原価や外注費用の支払いも発生するため、銀行からの融資などの準備が必要です。

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