山陽製紙株式会社


「SUMIDECO」「KAMIDECO」それぞれの取り組みが動き始める

  • 2013年10月28日(月) 14:51 JST
  • 投稿者:
    matsumoto

「健康なKAMIづくりプロジェクト」を推進する山陽製紙株式会社は、「KAMIDECO」=企業から出るオフィス古紙や廃棄物を再生して製品化する循環型製紙モデルに加え、古紙再生技術を活かした梅炭を漉き込んだ再生紙によるオリジナルブランド商品を「SUMIDECO」として展開する取り組みを始めています。「健康なKAMIづくりプロジェクト」を推進する同社にとって 、企業のもう一本の柱となるビジネスモデルがいよいよ動き始めました。
デザインプロデュース型商品開発促進事業の最終年度となる今年、総決算としてまずは9月にパリで開催されるテキスタイルの展示会“TEX WORLD”への出展。さらに12月の東京でのエコプロダクツ展への出展に向けて準備を進めています。これはデザインプロデュース型商品開発促進事業としての3年間の総決算でもあり、本格的なビジネススキームへの第一歩となる展示となります。

 
新たなプロジェクト「KAMIDECO」が始動の新展開。
 
 
BtoB、BtoC向けの商品開発などビジネスモデルの拡販をめざしていますが、現状の動きを教えてください。

山陽製紙株式会社 原田千秋専務 

再生紙メーカーとして、循環型のビジネスモデルを生み出したいとの思いがあり、以前から取り組んできた梅炭を練り込んだ再生紙でつくる「SUMIDECO」に加え、企業から出る古紙を回収し、弊社の技術で再生した紙で作ったノートを企業へ返すという「KAMIDECO」プロジェクトをプロデューサーの島様と、経営コンサルタントの佐藤様と進めています。
 

経営コンサルタントの佐藤先生とは、昨年参加した大阪産業創造館主催の「消費者モニター会」で出会いました。佐藤先生がおっしゃったことは、私たちにとって「目からウロコ」でした。それは、「to C(一般消費者向け)」に尖った商品を出してブランドを築き、その力を活かして「to B(企業向け)」の世界に出て行く、というものでした。これまでわが社では、企業から出るオフィス古紙や廃棄物を再生して製品化する循環型製紙モデルを「KAMIDECO」と名づけていましたが、今後はこれを企業向けだけでなく、従来から取り組んでいた、梅炭紙を使ったオリジナル商品「SUMIDECO」とともに、一般消費者に向けて展開していく準備を進めています。





S&Kコンサルティング有限責任事業組合 佐藤美雪さん


山陽製紙様のビジネスプランは、エコだから再生紙を使うべきという観点ではなく、再生紙の使い易さや風合いを追求して消費者の懐に入ろうとしています。この点がエコをテーマにする他の企業とは違い、とても興味深く感じました。

原田専務のこれまでのお考えをまとめ、梅炭の紙はここでしかできない技術ですので「SUMIDECO」としてブランド化力を強化し、BtoC(消費者向け)向けの商品として売り出すことを提案しました。

「KAMIDECO」は“地球を思う企業と人のための100%再生紙”というコンセプトを基に、BtoB(企業向け)のCSRに特化させつつ、環境問題に興味がある消費者toCを巻き込みながら、企業と消費者の循環の輪をつくりあげたいと考えています。このビジネスプランを確立させることで、山陽製紙で作り出される紙を“第三の紙”として定着させるというのが大きなミッションです。

私が関わってやってきたことは、山陽製紙さんがこれまでやって来られたことの「整理」に過ぎません。技術があるために、あれもやりたい、これもやりたい、と散漫になりがちだった戦略を整理したものです。

モニターの方々の反応を見ていると、「エコだから選ぶ」という人の割合が増えています。しかし作り手としては「エコであれば使ってもらえる」に甘んじることなく、風合いや使い心地、書きやすさなどを追求していくべきでしょう。将来的には再生紙を、非再生の上質紙やクラフト紙と比べても引けをとらない「第三の紙」として登場、定着させていくことを目指して、マーケティングを展開していきたいと考えています。  



現状での課題はありますか。

 
原田専務  

「KAMIDECO」は、特定の企業から回収した使用済みコピー用紙を再生し、封筒、プレゼン用紙、一筆箋など、その企業に必要な資材にして返すというのが理想です。 


しかしこのモデルでは弊社が機械を回せる最低ロットの300kgの古紙を1社からなかなか回収することができません。そこで、1社10kgの古紙を30社から集めて回収し、再生紙商品を作るという試みを行いました。参加いただいた企業の中に水処理関係の大手企業があり、背広の胸ポケットに入る大きさのメモ帳を気に入っていただき、下水道展の販促商品にと注文をいただきました。またある大学からは、新入生の説明会で使用するペーパーバックをという依頼をいただきました。実際は19社の企業が参加し、リサイクルした紙でつくった封筒、プレゼン用紙、一筆箋、名刺台紙にしたもの等を買い取ってもらっています。

こうして生まれた再生紙からは、「to B」だけでなく「to C」の商品も開発していきます。10月末にはWEBサイトを立ち上げ、12月の「エコプロダクツ展」では、「KAMIDECO」全体のビジネスモデルを提示していきたいと考えています。




「SUMIDECO」の素材としての魅力を伝えるため海外の展示会へ出展。  


使用後のコピー用紙をどう集めるのかという課題はありますが、
仕組みとしては川上から川下までの流れは見えていますね。 

「SUMIDECO」については海外の展示会に出展されるそうですね。 

原田専務 
以前海外視察に行った際に梅炭紙を紹介したのですが、それが意外な評価を受けました。スウェーデンで建材関係のプロに「住宅の内装材になるのでは」と評価されたり、ベルギーの素材展示会では「本の表紙に使えないか」と言われたり。そこで今回は、「SUMIDECO」の素材としての可能性を見極めることを目的に、9月にパリで開催されるテキスタイルの展示会“TEX WORLD”に出展します。 


「SUMIDECO」では日本で炭を練り込んだ紙を使いこれまでに、ライスパーパー、スーツカバーなどを商品化してきましたが,以前海外視察に行った際にブックカバーや住宅の内装材になるのではなど、海外ならではのアイデアをいただきました。今回、この展示会の出展でによって「SUMIDECO」の海外での可能性を探るとともに、商品の共同開発者や製作、ディストリビューター(現地代理店)となってくれる企業を探そうと考えています。 








では、最後にこの3年間の事業についての感想をいただけますか。 

原田専務 

再生紙メーカーとして、地元の企業の方々とともに何かを生み出したいとの思いで様々なプロジェクトに関わってきましたが、プロダクトアウトの発想から抜け出すことができませんでした。


このデザインプロデュース型商品開発促進事業に採択されたことで、プロデューサーの島様や経営コンサルの佐藤様と出会い、ものを売るための仕掛けの大切さ、難しさ、マーケットの分析やデザインの必要性などを学び、再生紙メーカーだからこそできる“循環型ビジネスモデル”を模索してきました。

最終年度になり、ようやく方向性が固まりつつあります。事業としては、小さな芽ではありますがこれを弊社のもう1本の柱にしたいと思っています。

取材日 2013.8.14

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